「親が退院したあと、一人で暮らせるだろうか」
「近くに頼れる家族がいない。仕事を休み続けるしかないのかな」
独身であっても、一人っ子であっても、親を支える仕事を一人ですべて引き受ける必要はありません。ただ、相談先を知らないまま退院や介護が始まると、目の前の対応に追われてしまいます。
離れて暮らす親の様子が分からない。
通院や手続きのたびに、仕事を休めるか心配。
介護費用まで自分の収入でまかなえるか不安。
最初に必要なのは、退職するかどうかを決めることではなく、親の住所地の相談先と、勤務先で使える制度を確認することです。
- 治療中・急変時:病院の担当医・看護師に状態と退院の見通しを確認。緊急の症状なら救急に相談する。
- 退院後の暮らし:入院先の退院支援担当・医療ソーシャルワーカーへ、家でできないことと独居かどうかを伝える。
- 地域の支援:親の住所地の地域包括支援センターへ相談。担当が分からなければ市区町村の高齢者福祉・介護保険担当へ。
- 自分の勤務:上司と人事・労務に、当面の休暇と介護休業・休暇の申出先を確認する。
入院中に退院日が決まっていなくても相談できます。親の同意を得られる範囲で、病状と支援の希望を共有しましょう。
一人で抱え込むことは違う。
相談先を増やすところから始めよう。
この記事では、介護が急に始まったときの連絡順、介護保険と仕事を両立する制度、親が元気なうちにできる準備を整理します。
- 親の住所地を担当する地域包括支援センターが、最初の相談先の一つ
- 介護保険サービスは、市区町村への要介護・要支援認定の申請から検討する
- 急な入院なら病院の退院支援窓口に、仕事の調整なら勤務先に早めに相談する
- 介護休業と介護休暇は用途・日数が異なる。短時間勤務も会社の制度を確認する
- 退職は収入や生活への影響を見積もり、支援の選択肢を確認したうえで判断する
目次
介護と仕事、最初に決めなくてよいこと
親の状態が変わった直後は、通院、食事、家のことが一度に気になります。「仕事を辞めた方が早い」と感じても、急いで結論を出す必要はありません。
自分の収入を確認する時間を残す
退職すると、自分の生活費や住居費の支払いも変わります。親の支援がいつまで必要か分からない段階では、まず休暇・勤務調整・介護サービスの選択肢を調べましょう。
「全部自分でやる」を前提にしない
遠方に住んでいても、相談の窓口になったり、手続きを整理したりできます。日々の支援は本人の状態に応じて介護サービスや地域の支援を組み合わせて考えます。
仕事を続けることが難しい事情もあります。「離職は絶対にいけない」と自分を追い詰めず、勤務先の制度と親の支援体制、自分の生活費を確認してから判断しましょう。
急に介護が必要になったら、どこへ連絡する?
一度にすべてを決めなくても大丈夫です。まず、いま親がどこにいて、何に困っているかに合わせて相談します。
退院までの見通し、帰宅後に必要な支援、家族が対応しにくい曜日や時間を伝える。「一人で通えるか」「家で安全に過ごせるか」など、具体的に聞く。
生活上の困りごと、近くに支える家族がいないこと、仕事を続けたいことを伝える。担当のセンターが分からなければ、親の住む市区町村に問い合わせる。
「親の介護に直面した。休暇と勤務調整の制度を知りたい」と伝え、就業規則と申出先を確認する。必要なら上司と業務の優先順位も相談する。
介護保険を使うまでの流れと費用の確認
介護保険サービスの利用を考える場合は、親の住む市区町村で要介護・要支援認定を申請します。認定調査などを経て結果が出たら、必要なサービスと費用についてケアマネジャー等に相談します。認定前に支援が必要な場合も、先に窓口へ事情を伝えてください。
生活上の困りごとを具体的に伝える
「買い物が難しい」「入浴が心配」「薬を飲み忘れる」など、普段の様子を整理します。診察の場で元気に見えても、家で困っていることがあれば伝えましょう。
利用するサービスと見積もりを確認する
訪問介護、通所介護、短期入所など、本人の状態と地域の提供状況に合う選択肢を相談します。ケアマネジャーは計画づくりを支援しますが、家族も希望や勤務時間、予算を伝えることが大切です。
親と自分のお金を分けて考える
介護保険が適用されるサービス費の自己負担は所得に応じて1〜3割。食費・居住費など別に必要な費用もあります。親の年金・貯蓄と必要な支出を、本人の意思を尊重して確認しましょう。子が支払うと決める前に、利用できる軽減制度を市区町村へ相談してください。
親が40〜64歳の場合は、介護保険の対象となる原因に条件があります。対象や利用方法は市区町村で確認してください。
仕事を続けるために使える制度
「休む制度」には、まとまった期間に支援体制を整えるものと、通院や打ち合わせに使うものがあります。制度ごとの違いを知っておくと、勤務先へ希望を伝えやすくなります。
| 制度 | 基本的な内容 | 使い方の例 |
|---|---|---|
| 介護休業 | 対象家族1人につき、3回まで・通算93日まで。取得には所定の要件と申出手続きがある | 退院後の支援体制、ケアマネジャーとの相談、サービスの手配を進める |
| 介護休暇 | 対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日。原則1日または時間単位で取得。給与の扱いは会社規程による | 通院の付き添い、手続き、ケアマネジャーとの短時間の打ち合わせ |
| 短時間勤務等の措置 | 勤務先は、短時間勤務、時差出勤などの選択肢から1つ以上の制度を設ける。利用の詳細は勤務先に確認する | 定期的な支援が必要な時期に、働く時間を調整する |
| 所定外労働の制限など | 一定の要件で、所定外労働の制限や時間外労働の制限などを申し出られる | 決まった時間に帰宅する必要がある場合に相談する |
介護休業は、93日間ずっと自分が介護するための制度と考える必要はありません。厚生労働省は、仕事と介護を両立できる体制を整える準備期間としての活用を案内しています。雇用保険の要件を満たす場合には介護休業給付金もありますが、支給の可否・金額は個別に確認してください。
「親の介護が必要になりそうです。介護休暇・介護休業と、勤務時間を調整できる制度の申出方法を教えてください。給与や給付金についても確認したいです」
2025年4月からは、介護に直面したと申し出た労働者への制度の個別周知と意向確認などが事業主の義務になっています。「忙しいから相談しづらい」と感じる場合も、人事・労務担当に窓口を尋ねられます。
一人で抱えないための役割分担
独身だからといって、親の介護の担当者が自分だけになるとは限りません。ほかの家族がいない場合も、支援の一部を地域のサービスに任せる方法を考えられます。
- 日々の生活:食事、入浴、外出などで困ることを、介護サービスでどこまで支援できるか相談する。
- 連絡と確認:医療機関、ケアマネジャー、勤務先の連絡先を整理し、緊急時に誰から連絡が来るかを確認する。
- 遠距離からの支援:電話やオンラインで可能な連絡、現地でしかできない手続きや訪問を分ける。
- 自分の休息:介護に使う時間の上限を考え、負担が続くときは短期入所なども相談する。
介護サービスの利用には認定や地域の提供状況による条件があります。相談時に「一人では何曜日の何時に対応できない」と具体的に伝えると、支援の組み合わせを検討しやすくなります。
親が元気なうちにできる3つの準備
準備の目的は、親を管理することではありません。本人の希望を知り、困ったときに相談を始めやすくすることです。
暮らしと支援の希望を聞く
「家で過ごすうえで今、心配なことはある?」「体調を崩したら誰に相談したい?」など、答えやすいところから話します。住まいや医療についての希望も、一度で決めずに繰り返し確かめます。
連絡先と書類を整理する
かかりつけ医、薬、緊急連絡先、保険証の保管場所を本人と確認します。通帳や印鑑の場所を知っていても、子が当然に口座を使えるわけではありません。代理手続きが必要になりそうなら、本人の意思を確認し、金融機関等に方法を相談しましょう。
二つの窓口を控えておく
親の住所地の地域包括支援センターと、自分の勤務先の人事・労務窓口。連絡先をスマホに残し、介護休暇などの申出方法を確かめておきます。
まとめ|今週できること
仕事と親の介護を両立できるかどうかは、親の状態や勤務先、地域のサービスによって違います。「必ず続けられる」とも、「自分だけでは無理」とも、相談前に決める必要はありません。
- 親の住所地の地域包括支援センターを調べる。
- 勤務先の介護休暇・介護休業の申出先を確認する。
- 親に、いま困っていることと、今後の暮らしの希望を聞く。
自分の暮らしを守ること。
どちらも相談の理由にしていい。
公式情報と相談窓口
- 厚生労働省|地域包括支援センターを調べる
- 厚生労働省|介護サービス利用までの流れ
- 厚生労働省|介護サービスにかかる利用料
- 厚生労働省|介護休業
- 厚生労働省|介護休暇
- 厚生労働省|介護と仕事の両立に関する法改正
※2026年9月に確認した情報です。介護保険の適用、休暇の対象、賃金・給付は状況によって異なります。親の市区町村と勤務先に個別に確認してください。
※この記事は一般的な介護保険・仕事との両立制度を紹介しています。認定や給付の対象となるか、利用できるサービスや勤務先の条件は個別に異なります。具体的な計画は地域包括支援センター、市区町村、勤務先に相談してください。