親の相続について、
兄弟で話し合いを始めた。
ところが、
実家を誰が相続するのか、
預金をどう分けるのか、
介護や生前贈与をどう考えるのか。
話せば話すほど、
意見が合わなくなってしまうことがあります。
「兄が実家を譲らない」
「姉は介護した分を多く欲しいと言っている」
「昔もらったお金まで持ち出されている」
「親の預金額について兄弟の説明が合わない」
「話をするたびにケンカになる」
相続でもめたときに、
すぐに
「裁判しかない」
と考える必要はありません。
まず必要なのは、
何について意見が違っているのかを整理すること
です。
「誰が正しいか」を決める前に、
「何が決まっていないのか」を整理する。
家族だけで話し合う段階、
専門家を入れる段階、
家庭裁判所を利用する段階。
順番を知っておくだけでも、
次に何をすればいいのかが見えやすくなります。
- 兄弟で遺産分割がまとまらないときの基本
- 最初に整理したい5つのこと
- 実家・介護・生前贈与でもめた場合の考え方
- 相続でもめたときに避けたい行動
- 弁護士へ相談するタイミング
- 遺産分割調停とは何か
- 調停でも決まらなかった場合の流れ
目次
兄弟でもめたら、最初にすること
兄弟で意見がぶつかると、
つい相手の言葉に反応してしまいます。
けれど、
そのまま話を続けても
同じ主張を繰り返すだけになりがちです。
まず、
「何でもめているのか」を分けて考えます。
- 誰が相続人なのか
- どこまでが相続財産なのか
- 財産はいくらと評価するのか
- 誰がどの財産を取得するのか
- 介護や生前贈与をどう考えるのか
- 親のお金の使い道に問題があるのか
「兄と意見が合わない」
だけでは、
解決方法は見えてきません。
しかし、
「実家の評価額について意見が違う」
と分かれば、
不動産の評価資料を確認するという
次の行動が見えてきます。
「兄が悪い」「妹が欲張っている」と考えるより、
何について合意できていないのかを
一つずつ整理する方が、
話し合いを進めやすくなります。
まず整理したい5つのこと
遺産の分け方を話す前に、
土台となる情報をそろえます。
01
相続人を確定する
戸籍などを確認し、
遺産分割に参加する相続人を確認します。
02
相続財産を一覧にする
預金、不動産、株式など、
分ける対象となる財産を整理します。
03
財産の評価額を確認する
特に不動産などは、
どの金額を基準にするかで
意見が分かれることがあります。
04
それぞれの希望を書き出す
実家が欲しいのか、
現金を希望するのかなど、
兄弟それぞれの希望を整理します。
05
争っている点を分ける
介護、生前贈与、財産の使い込みなど、
分け方以外の問題も整理します。
「相続財産そのもの」と
「家族が抱えている不満」を分けて整理すると、
話し合うべきことが見えやすくなります。
実家を誰が相続するかで決まらない場合
兄弟間の遺産分割で
特に難しくなりやすいのが実家です。
たとえば、
長男は
「実家を残したい」。
一方、
次男は
「売って現金で分けたい」。
この場合、
単純に相続割合だけを話しても
解決できないことがあります。
一人が取得する
一人が実家を相続し、
他の相続人には預金など別の財産を分けます。
代償金で調整する
実家を取得した人が、
他の相続人へ金銭を支払って調整します。
売却して分ける
実家を売却し、
売却代金を分ける方法を検討します。
共有する
複数人で共有する方法もありますが、
将来の管理や売却まで考えて判断します。
一方は「3,000万円の家」、
もう一方は「5,000万円の家」と考えていれば、
分け方の話はまとまりにくくなります。
まずは評価の前提をそろえることが大切です。
「自分だけ介護した」と言われた場合
兄弟の一人が
長期間親の介護をしていた場合、
同じ相続分では納得できない」
という主張が出ることがあります。
相続人が、
亡くなった人の財産の維持や増加について
特別な貢献をした場合には、
寄与分
が問題になることがあります。
寄与分は、
親族として通常期待される範囲を超えた
特別な貢献だったかなどを踏まえて考えます。
介護の期間や内容、
費用負担などを確認できる資料が重要になることがあります。
- 介護期間が分かる記録
- 医療・介護関係の資料
- 立て替えた費用の領収書
- 銀行振込などの記録
- 介護の状況が分かるメモなど
生前贈与でもめている場合
「兄だけ親から家を買うお金をもらっていた」
「妹は結婚するときに
多額の援助を受けていた」
こうした過去の贈与が、
遺産分割の場で問題になることがあります。
一定の贈与などについては、
特別受益
として具体的な相続分を考える際に
問題になる場合があります。
いつ、誰が、いくら、
どんな目的で受け取ったのかを整理します。
通帳、振込記録、契約書など、
客観的な資料が残っているか確認しましょう。
「昔お母さんがそう言っていた」
だけでは、
兄弟それぞれの記憶が違うこともあります。
親のお金・使途不明金でもめている場合
相続の話し合いで、
特に対立が深くなりやすいのが
親の預金です。
親のお金を管理していた兄弟に対して、
「亡くなる前に大きな引き出しがある」
「何に使ったのか分からない」
「親の生活費にしては多すぎない?」
「本当に親本人が引き出したの?」
この場合、
まず感情的に
「使い込んだ」と決めつけるのではなく、
預金履歴や領収書などを確認します。
使途不明金など、
遺産分割そのものとは別の法律問題になるケースもあります。
金額が大きい場合や説明が大きく食い違う場合は、
弁護士へ相談して問題を整理する方法があります。
相続でもめたときに避けたい5つのこと
感情的なLINEやメールを送り続ける
一度送った文章は残ります。
怒っているときほど、
すぐに返信しない方がよい場合があります。
一人だけで財産を処分する
相続関係が整理できていない段階で
独断で財産を売却・処分すると、
新たなトラブルにつながることがあります。
「長男だから」で結論を出す
昔からの家族の慣習と、
現在の法律上の相続関係は分けて考えます。
早く終わらせるためだけに署名する
内容を十分理解しないまま
遺産分割協議書などに署名するのは避けましょう。
何年も放置する
時間がたつほど、
資料がなくなったり、
さらに次の相続が起きたりして、
権利関係が複雑になることがあります。
弁護士へ相談した方がいいのはいつ?
相続だからといって、
最初から必ず弁護士が必要なわけではありません。
ただし、
すでに相続人同士の主張が対立している場合は、
早めに相談した方が整理しやすいことがあります。
- 兄弟同士ではもう話し合いができない
- 相手が弁護士を付けた
- 財産を隠している疑いがある
- 多額の使途不明金がある
- 生前贈与や寄与分について大きく争っている
- 遺産分割協議書への署名を迫られている
- 家庭裁判所の調停を検討している
弁護士へ相談する目的は、
すぐに争うことだけではありません。
自分の立場や法律上の問題点、
どこなら譲れるのかを整理するために
相談する方法もあります。
話し合いで決まらなければ遺産分割調停へ
相続人同士で話し合っても
遺産の分け方が決まらない場合には、
家庭裁判所の
遺産分割調停
を利用する方法があります。
調停では、
家庭裁判所の調停委員会が
それぞれから事情を聞き、
資料なども確認しながら、
合意できる解決を目指して話し合いを進めます。
家庭裁判所へ必要な書類を提出して手続きを始めます。
相続財産、評価額、それぞれの希望などを確認します。
調停委員会を介して、
合意できる分け方を探します。
合意内容に基づいて、
その後の相続手続きを進めます。
「兄弟のどちらが勝つか」を決める場というより、
第三者を介して、
合意できる着地点を探す手続きです。
調停でも決まらなかったらどうなる?
遺産分割調停を行っても、
相続人同士で合意できないことがあります。
調停が不成立となった場合は、
原則として
遺産分割審判
へ移ります。
審判では、
家庭裁判所が
遺産の内容や性質、
各相続人の事情などを踏まえながら、
遺産の分け方を判断します。
家族同士で合意できれば、
それぞれの生活や希望に合わせた
分け方を考えることができます。
一方、審判では裁判所が判断するため、
必ずしも全員の希望どおりになるとは限りません。
だからこそ、
調停に進んだ後でも、
合意できる余地があるなら
話し合いを続けることには意味があります。
遺産分割を長期間放置しない
兄弟でもめていると、
「しばらく触れないでおこう」
と思うこともあるでしょう。
しかし、
遺産分割を何年も放置することはおすすめできません。
現在のルールでは、
相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、
原則として、
生前贈与などの特別受益や
特別な貢献による寄与分を反映した
「具体的相続分」による分割ができなくなる仕組みがあります。
相続開始の時期などによって経過措置もあるため、
長期間未分割の相続がある場合は
現在のルールを確認することが大切です。
特別受益や寄与分を主張したい事情がある場合は、
特に早めに専門家へ相談しましょう。
また、
不動産については
相続登記の申請も義務化されています。
「兄弟でもめているから何もしない」
ではなく、
少なくとも期限がある手続きだけは
別に確認して進めることが大切です。
まとめ|兄弟でもめたら「感情」と「相続の問題」を分けて考える
兄弟で遺産分割にもめると、
相続の話だけでは済まなくなることがあります。
昔の兄弟関係。
親から受けた援助。
介護。
実家への思い。
親との関係。
さまざまな感情が
一緒に出てくるからです。
だからこそ、
一度すべてを分けて整理します。
01
相続人と財産を確認する
まず事実関係をそろえます。
02
何でもめているのか整理する
実家、評価額、介護、生前贈与など、
問題を分けます。
03
家族で話し合う
感情だけでなく、
資料や事実を基に話し合います。
04
難しければ専門家へ相談する
法律上の対立がある場合は、
弁護士などへの相談を検討します。
05
必要なら家庭裁判所を利用する
遺産分割調停、
まとまらなければ審判という方法があります。
「どちらが勝つか」ではなく、
何をどう整理すれば
家族が次へ進めるのかを考える。
兄弟だけでは解決できない状態になったら、
無理に話し合いを続けることだけが
正解ではありません。
第三者の力を借りることも、
相続を前へ進める一つの方法です。
免責事項
本記事は、兄弟間の遺産分割や相続トラブルについて、
一般的な情報をわかりやすく紹介することを目的としています。
遺産の範囲、財産評価、特別受益、寄与分、
使途不明金、遺産分割調停・審判などの扱いは、
個別の事情や相続開始の時期によって異なる場合があります。
判断が難しい場合や相続人間で意見が対立している場合は、
裁判所・法務局などの公的機関の最新情報を確認し、
必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などの専門家へご相談ください。
START FROM 39
実家、お金、親の思い、兄弟との関係。
相続では、
一つの答えを急いで決めるより、
何が問題なのかを整理することから始めます。
Start From 39では、
家族・相続・終活について、
「知らないままにしないための知識」
をわかりやすく紹介しています。