親が亡くなり、
実家を相続することになった。
そこで初めて、
大きな問題に気づくことがあります。
「誰も住まないけれど、売っていいの?」
「思い出のある家だから残したい」
「貸せば家賃収入になる?」
「兄弟で共有しておけばいい?」
「今すぐ決めなければいけない?」
実家は、
預金のように簡単には分けられません。
そこには、
土地や建物としての「資産価値」だけでなく、
家族の思い出や親への気持ちも残っています。
だからこそ、
「売るのは寂しい」という気持ちだけで残したり、
反対に
「誰も住まないから」と急いで売ったりする前に、
一度整理して考えることが大切です。
「売る」か「残す」だけではありません。
売る・住む・貸す・残す。
それぞれのメリットと負担を比べて、
「これからその家を誰が、どう使うのか」から考えます。
- 実家を相続したときの4つの選択肢
- 売却するメリット・注意点
- 自分や家族が住む場合に考えたいこと
- 賃貸にする前に確認したいこと
- 空き家のまま残す場合の負担
- 兄弟共有を慎重に考えたい理由
- 実家を売る前に確認したい税金と相続登記
- 後悔しない選択をするための判断基準
目次
実家を相続したら、まず「売るか残すか」を決めなくていい
親が亡くなった直後は、
葬儀や各種手続きなどで
気持ちにも時間にも余裕がありません。
そんな時期に、
思い出の詰まった実家について
大きな決断を急ぐ必要はありません。
まず確認したいのは、
次のようなことです。
- 誰が相続人なのか
- 遺言書があるか
- 実家を誰が相続する予定なのか
- 住宅ローンなどの債務が残っていないか
- 土地・建物の名義は誰になっているか
- 実家のおおよその価値はいくらか
- 誰か住みたい人がいるか
- 兄弟それぞれがどう考えているか
実家の価値や維持費、
家族の希望が分からない状態では、
判断材料が足りません。
まず情報を集め、
そのあとで選択肢を比較しましょう。
実家には4つの選択肢がある
実家を相続した場合、
大きく分けると4つの選択肢があります。
売る
実家を売却し、
不動産を現金に換えます。
住む
自分や兄弟、
子どもなどが住居として使います。
貸す
賃貸住宅として活用し、
家賃収入を得る方法です。
残す
売却や賃貸をせず、
当面そのまま所有します。
どれが正解かは、
家によって違います。
| 選択肢 | 向いているケース |
|---|---|
| 売る | 誰も住む予定がなく、維持する理由も少ない |
| 住む | 実際に住みたい家族がいて、生活にも合っている |
| 貸す | 賃貸需要があり、収支が合う |
| 残す | 将来使う予定や明確な目的がある |
選択肢1|実家を売る
誰も住む予定がなく、
将来使う予定もない場合、
売却は有力な選択肢になります。
- 今後、誰も住む予定がない
- 実家から遠く離れて暮らしている
- 管理する人がいない
- 固定資産税や修繕費が負担になる
- 兄弟で現金にして分けたい
- 建物の老朽化が進んでいる
実家を売る大きなメリットは、
不動産を
現金という分けやすい財産に変えられること
です。
兄弟3人で相続するなら
実家を一人が取得すると、
他の兄弟との調整が必要になります。
一方、
実家を売却して現金にすれば、
相続人同士で分けやすくなります。
また、
誰も住んでいない家を持ち続ける場合に必要になる
管理や維持からも離れられます。
不動産の価値を知らないまま売却を決める必要はありません。
周辺の取引事例や複数の査定などを確認し、
おおよその市場価値を把握してから
家族で判断する方が安心です。
選択肢2|自分や家族が住む
実家に自分や兄弟が住むなら、
家を残す意味は明確です。
ただし、
「思い出があるから住む」
だけで決めるのではなく、
今後の暮らしに本当に合うのかも考えます。
- 通勤・通学に無理がないか
- 病院や買い物など生活環境はどうか
- 建物の老朽化は進んでいないか
- 耐震性に問題はないか
- リフォームはいくら必要か
- 固定資産税などを負担できるか
- 将来も住み続ける予定があるか
「これから維持する家を引き継ぐ」と考える。
古い実家の場合、
水回り、屋根、外壁、
給湯器などの修繕が必要になることもあります。
住む場合でも、
今後10年程度の維持費まで考えて判断しましょう。
選択肢3|貸す
「売るのはもったいないから、
貸して家賃収入を得よう」
と考える人もいます。
賃貸需要がある地域なら、
実家を資産として活用できる可能性があります。
ただし、
家賃=そのまま利益
ではありません。
- リフォーム・修繕費
- 不動産会社への管理費
- 入居者募集の費用
- 固定資産税など
- 火災保険など
- 設備故障時の修理費
- 空室期間の負担
家賃10万円で貸せても
年間家賃は120万円ですが、
そこから管理費、修繕費、
税金、保険、空室などの負担があります。
「いくらで貸せるか」だけでなく、
手元にいくら残るのか
で考えることが大切です。
立地や建物の状態によっては、
リフォーム費用をかけても
希望する家賃で借り手が見つからないことがあります。
不動産会社などに
売却価格と想定賃料の両方を確認すると比較しやすくなります。
選択肢4|そのまま残す
一番決断しやすそうに見えて、
実は注意したいのが
「とりあえず残す」という選択です。
親が亡くなったばかりで、
すぐに実家を処分する気持ちになれない。
それ自体は自然なことです。
ただし、
「今は決めない」と「何年も放置する」は別
です。
- 固定資産税などの支払い
- 庭・雑草の管理
- 郵便物の確認
- 換気・通水
- 台風・大雨などの後の確認
- 建物の修繕
- 防犯対策
人が住まなくなった家は、
定期的な管理が必要です。
今すぐ結論を出せないなら、
「1年後にもう一度考える」など
見直す時期を家族で決めておくのも一つの方法です。
期限を決めずに残すと、
気づけば何年も空き家のままということがあります。
実家を持ち続けると、どんなお金がかかる?
実家を残すかどうかを考えるときは、
家そのものの価値だけではなく、
これから払うお金
も確認します。
| 費用 | 主な内容 |
|---|---|
| 固定資産税など | 所有している間、継続して負担 |
| 修繕費 | 屋根・外壁・設備・水回りなど |
| 庭・建物管理 | 草刈り、清掃、換気など |
| 保険 | 火災保険など |
| 交通費 | 遠方の場合の定期的な管理費用 |
| 将来の解体費など | 建物を取り壊す場合に発生 |
「今いくらで売れるか」だけでなく、
「これから10年間持ったらいくらかかるか」も
判断材料にしてみましょう。
売る前に相続登記を確認する
親名義のままの実家を相続した場合は、
不動産の名義についても確認が必要です。
2024年4月から、
不動産の
相続登記は義務化
されています。
相続によって不動産を取得したことを知った場合、
原則として
その取得を知った日から3年以内
に相続登記を申請する必要があります。
遺産分割の話し合いがまとまり、
実家を取得する人が決まった場合にも、
その内容を踏まえた登記が必要になります。
「売るかどうかが決まっていないから、
名義もそのままでいい」
と放置しないようにしましょう。
話し合いが長引き、
期限内に通常の相続登記を行うことが難しい場合には、
「相続人申告登記」という制度もあります。
状況に応じて法務局や司法書士へ確認しましょう。
実家を売る前に税金も確認する
相続した実家を売却して利益が出た場合、
譲渡所得に対する税金が関係することがあります。
一方で、
相続した家の状況によっては
税負担を軽減する特例を利用できるケースもあります。
一定の要件を満たす
被相続人の居住用家屋などを売却した場合、
譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
相続人が3人以上で取得する場合などは、
控除上限が異なるケースがあります。
ただし、
どんな実家でも利用できる制度ではありません。
建築時期、
相続後の利用状況、
売却時期、
建物の状態など、
複数の要件があります。
相続した空き家に関する特例には、
相続後の居住・事業・貸付状況などが
要件になるものがあります。
「とりあえず貸して、後から売ろう」と考えている場合は、
行動する前に特例の要件を確認しておく方が安心です。
不動産は、
「売るか貸すか」の順番によって
税務上の扱いが変わる可能性があります。
金額が大きい場合は、
売却前に税理士などへ確認することも検討しましょう。
売る?残す?後悔しないための5つの判断基準
実家について迷ったら、
「思い出があるか」だけでなく、
次の5つに分けて考えてみます。
実際に使う人がいるか
自分や家族が本当に住む予定があるのか。
「いつか住むかも」ではなく、
具体的な予定があるかを考えます。
いくらで売れるか
思い込みで価値を判断せず、
現在の市場価値を確認します。
いくらで貸せるか
賃貸需要と想定家賃、
必要なリフォーム費用を確認します。
維持費はいくらか
税金、修繕、管理など、
持ち続けるための年間コストを考えます。
5年後、10年後にどうしたいか
今だけでなく、
将来その実家を誰が管理し、
最終的にどうするのかまで考えます。
それとも、
「売る決断ができないだけ」なのか。
この二つは、
似ているようで違います。
兄弟で意見が違うときはどうする?
実家については、
兄弟それぞれの考えが違うことがあります。
兄「親の家だから残したい」
妹「誰も住まないなら売りたい」
弟「貸せば収入になるのでは?」
この状態で、
「誰の意見が正しいか」を話しても
なかなか決まりません。
そこで、
感情だけではなく
共通の数字をそろえます。
- 売却した場合のおおよその価格
- 賃貸にした場合の想定家賃
- 必要なリフォーム費
- 年間の固定資産税など
- 年間の維持・管理費
- 解体が必要になった場合の費用
「売りたい」「残したい」
だけだった話が、
「年間これだけ維持費がかかる」
「売ればこの程度になる」
「貸した場合の手取りはこのくらい」
と数字になれば、
家族で比較しやすくなります。
不動産会社に査定を依頼したからといって、
必ず売却しなければならないわけではありません。
「残すか売るか」を判断するために、
今の価値を知るという使い方もできます。
まとめ|実家は「思い出」と「これから」を分けて考える
親の実家は、
ただの不動産ではありません。
子どもの頃の記憶。
親と過ごした時間。
家族が集まった場所。
だから、
売ることに迷うのは自然です。
けれど、
実家を残すということは、
思い出だけでなく
建物と土地をこれから管理していくこと
でもあります。
01
家族の希望を確認する
誰か住みたい人がいるのか、
まず確認します。
02
実家の価値を知る
売却価格や賃貸価格など、
現在の市場価値を確認します。
03
維持費を計算する
税金、修繕、管理など、
持ち続ける費用を確認します。
04
4つの選択肢を比べる
売る・住む・貸す・残すを
同じ条件で比較します。
05
5年後、10年後まで考えて決める
「今どうするか」だけでなく、
将来誰がその家を引き継ぐのかまで考えます。
親の思いを残す方法ではありません。
売るとしても、住むとしても、貸すとしても、残すとしても。
大切なのは、
家族が納得して
「これからの暮らし」に合う選択をすることです。
免責事項
本記事は、相続した実家の売却・居住・賃貸・保有、
相続登記や不動産に関する税制について、
一般的な情報をわかりやすく紹介することを目的としています。
不動産の価値、税金、特例の適用要件、
登記手続きなどは個別の事情や制度改正によって異なる場合があります。
実際に売却・賃貸・相続登記などを行う場合は、
法務局・税務署などの最新情報を確認し、
必要に応じて司法書士・税理士・不動産会社などの専門家へご相談ください。
START FROM 39
残す。売る。住む。貸す。
大切なのは、
正解を探すことではなく、
家族にとって無理のない選択を見つけることです。
Start From 39では、
家族・相続・終活について、
「これからどうする?」
を一つずつ整理していきます。