「うちは、兄弟仲がいいから大丈夫」
相続について話すと、
そう考える人は少なくありません。
けれど相続で意見がぶつかるのは、
もともと仲の悪い家族だけではありません。
実家を誰が相続するのか。
親から生前に援助を受けた人がいる。
長年、親の介護をしてきた人がいる。
親のお金を管理していた兄弟がいる。
それまで表面に出なかった
小さな不満や認識の違いが、
相続をきっかけに一気に表れることがあります。
「どうして兄だけ多いの?」
「私はずっと親の介護をしてきた」
「実家を売るなんて聞いていない」
「親のお金、本当にこれだけ?」
「お父さんは私に家をくれると言っていた」
相続で難しいのは、
お金の計算だけではありません。
家族それぞれが持っている
「私はこうしてきた」「親はこう思っていたはず」
という気持ちが重なるからです。
財産の多さよりも、
家族それぞれの「納得できない」から始まることがあります。
揉める原因を先に知っておけば、
親が元気なうちにできる準備も見えてきます。
- 相続で家族が揉める主な原因
- 実家がある相続で意見が分かれやすい理由
- 生前贈与がトラブルになるケース
- 親の介護をした人と、していない人の認識の違い
- 親のお金を管理していた場合の注意点
- 遺言書がないことで起こりやすい問題
- 相続で揉める前にできる準備
目次
相続は、なぜ家族同士で揉めやすい?
相続では、
それまで家族の中で曖昧だったことを
はっきり決めなければならなくなります。
誰が実家をもらうのか。
預金をどう分けるのか。
親の介護をしたことをどう考えるのか。
生前にもらったお金をどう扱うのか。
親が元気なうちは
話さなくても済んでいたことが、
相続では避けて通れません。
兄弟全員に同じ金額を分ければ
必ず納得できるとは限りません。
介護をした人、生前に援助を受けた人、
実家を守ってきた人など、
家族それぞれに事情があります。
相続では、
財産そのものより
「自分だけ損をしているのではないか」
という感情が、
トラブルの入口になることがあります。
原因1|財産の多くが「実家」
相続で特に分けにくい財産が、
実家などの不動産です。
預金なら、
金額に応じて分けることができます。
しかし、一軒の家を
兄弟3人で物理的に3分割することはできません。
たとえば
親の財産が、
実家 3,000万円相当
預金 500万円
だったとします。
長男が実家を相続すると、
他の兄弟との財産額の差を
どう調整するのかという問題が出てきます。
さらに、
「実家を残したい人」
「売って現金にしたい人」
「自分が住みたい人」
がいれば、
金額だけでは解決できません。
兄弟で共有すれば
その場では平等に見えることもあります。
しかし、将来売却するときや、
次の相続が発生したときに
権利関係が複雑になる可能性があります。
原因2|一部の兄弟だけ生前贈与を受けている
親が元気なうちに、
子どもへお金を渡している家庭は珍しくありません。
住宅購入資金。
結婚資金。
事業資金。
多額の生活援助。
親としては
「必要だったから援助しただけ」
というつもりでも、
相続のときに他の兄弟から見ると、
今の遺産まで同じ割合でもらうの?」
という不満につながることがあります。
一定の生前贈与などについては、
遺産分割で
「特別受益」
が問題になることがあります。
生前にもらったお金があれば、
必ずその全額を相続分から差し引く、
という単純な話ではありません。
贈与の目的や時期、金額、
親の意思などによって判断が異なるため、
大きな贈与がある場合は専門家へ確認した方が安心です。
原因3|親の介護をした人と、していない人がいる
相続で感情的な対立になりやすいのが、
親の介護です。
近くに住む娘が
何年も病院へ付き添い、
食事や買い物を手伝っていた。
一方、
遠方に住む兄弟は
年に数回しか帰ってこなかった。
そんな状況で相続になり、
「兄弟だから同じように分けよう」
と言われれば、
介護をしてきた側が納得できないこともあります。
「私は何年間も自分の時間を使った」
「仕事を減らして介護した」
「病院代や生活費を立て替えた」
「なぜ何もしなかった兄弟と同じなの?」
一定の場合には、
被相続人の財産の維持や増加に
特別な貢献をした相続人について、
寄与分が問題になることがあります。
寄与分が認められるかどうかは、
介護の内容や期間、
財産の維持・増加への貢献などを踏まえて判断されます。
家族として一般的に行う範囲を超える
特別な貢献だったかどうかが問題になることがあります。
原因4|親の財産がよく分からない
「父がいくら持っていたのか、
実は誰も知らない」
これも、
相続では珍しくありません。
- 複数の銀行口座
- 証券会社の株式・投資信託
- ネット銀行・ネット証券
- 生命保険
- 土地・建物
- 貸金庫
- 借入金・カードローン
- 家族も知らない契約や資産
財産の全体像が見えないと、
「まだ口座があるのでは?」
「誰かが隠しているのでは?」
「本当にこれが全部?」
と疑念が生まれやすくなります。
相続では、
金額の問題以上に
「情報が共有されていないこと」が
不信感につながる場合があります。
原因5|一人の家族が親のお金を管理していた
親が高齢になると、
一人の子どもが通帳やキャッシュカードを預かり、
生活費などを管理することがあります。
管理していた本人には
不正をしたつもりがなくても、
相続が始まると、
他の兄弟から
「毎月こんなにお金が必要だったの?」
「本当に全部、親のために使ったの?」
と聞かれることがあります。
数年前の支出について
領収書も記録もなければ、
説明することは簡単ではありません。
通帳から現金を引き出した場合は、
何のために使ったのか、
領収書やメモなどを残しておくと、
後から家族へ説明しやすくなります。
家族だからこそ、
「説明しなくても分かってくれる」
と考えないことが大切です。
原因6|兄弟それぞれの「公平」が違う
相続では、
同じ家族でも
「公平」の考え方が違います。
同じ金額が公平
兄弟なのだから、
財産はできるだけ同じ金額に分けたい。
介護した分を考えてほしい
長年親を支えた人が、
少し多く相続する方が公平だと考える。
生前援助も含めて考えたい
過去にもらった援助まで含めて、
全体として公平にしたいと考える。
実家を守った人を優先したい
親と同居し、
家や土地を守ってきた人への配慮が必要だと考える。
どれも、
その人の立場から見れば
理由のある考え方です。
だからこそ、
「自分の考える公平が、
家族全員にとっての公平とは限らない」
ということを知っておく必要があります。
原因7|親の希望が「言葉だけ」で残っている
相続でよく出てくるのが、
「実家は長男にやると言っていた」
「預金は娘に渡すと言っていた」
「兄にはもう十分渡したと言っていた」
「私に多く残すと言っていた」
本当に親がそう話していたとしても、
他の兄弟がその場にいなければ、
内容を確認することは難しくなります。
さらに、
親がそれぞれの子どもに
少し違う話をしていたというケースもあります。
「親がこう言っていた」という話だけで、
相続手続きがその内容どおりに決まるとは限りません。
財産の分け方について明確な希望がある場合は、
元気なうちに遺言書など適切な方法で
意思を残しておくことを検討します。
親としては
「子どもたちなら分かってくれる」
と思っていても、
その曖昧さが
子どもたちを困らせることがあります。
相続で揉める前にできる5つの準備
相続トラブルを
すべて防ぐ方法があるわけではありません。
それでも、
親が元気なうちに整理しておくことで、
家族の混乱を減らせることはあります。
01
財産の場所を分かるようにしておく
銀行、不動産、証券、保険、借金など、
財産の所在を整理しておきます。
02
実家をどうしたいか話しておく
誰かが住むのか、売るのか、残したいのか。
親の希望を確認しておきます。
03
大きな生前贈与を整理する
誰に、いつ、何のために、
どの程度の援助をしたのか記録しておくと、
後から確認しやすくなります。
04
家族で少しずつ話す
いきなり「遺産をどう分ける?」ではなく、
実家やこれからの暮らしから話を始めます。
05
必要なら遺言書を検討する
財産の分け方について希望がある場合は、
適切な形で意思を残すことを検討します。
「税金を減らすこと」だけではありません。
家族が迷わないようにしておくことも、
大切な相続対策です。
すでに話し合いがこじれている場合は?
家族だけで話し合っても
意見がまとまらない場合、
無理に結論を急ぐ必要はありません。
問題が
「相続税」なのか、
「不動産」なのか、
「遺産の分け方そのもの」なのかによって、
相談先も変わります。
| 困っていること | 主な相談先 |
|---|---|
| 遺産分割でもめている | 弁護士 |
| 相続税・税務の判断 | 税理士 |
| 実家など不動産の相続登記 | 司法書士 |
| 家庭裁判所で話し合いたい | 遺産分割調停などを確認 |
遺産分割について
相続人同士の話し合いでまとまらない場合には、
家庭裁判所の
遺産分割調停
を利用する方法があります。
調停では、
家庭裁判所で事情を整理しながら、
相続人間の合意を目指します。
「もう兄とは話したくない」
という状態になるまで家族だけで抱え込むより、
法律上の争点が出てきた段階で
専門家へ相談する方法もあります。
まとめ|「うちは大丈夫」と思っている家族ほど、少しだけ話しておく
相続で揉める原因は、
財産の金額だけではありません。
実家。
生前贈与。
親の介護。
財産の不透明さ。
親のお金の管理。
兄弟それぞれの公平感。
親が残した言葉。
こうした小さな認識の違いが、
相続をきっかけに表面化することがあります。
財産を見えるようにする
何がどこにあるのか、
家族が確認できるようにしておきます。
親の希望を聞いておく
特に実家や大きな財産について、
親がどう考えているのか確認します。
必要なことは記録に残す
生前贈与や親のお金の管理など、
後から確認が必要になりそうなことは記録します。
家族で少しずつ話しておく
相続が起きてから初めて話すのではなく、
親が元気なうちから少しずつ共有しておきます。
「言わなくても分かる」ではなく、
「元気なうちに少し話しておく」。
相続で本当に残したいものは、
財産だけではなく、
その後も家族が普通に話せる関係なのかもしれません。
免責事項
本記事は、相続や遺産分割で起こりやすいトラブルについて、
一般的な情報をわかりやすく紹介することを目的としています。
特別受益、寄与分、遺産分割、遺留分などの扱いは、
個別の家族関係、財産状況、贈与の内容などによって異なります。
相続人間で意見がまとまらない場合や法律上の判断が必要な場合は、
家庭裁判所などの公的機関の最新情報を確認し、
必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などの専門家へご相談ください。
START FROM 39
実家、お金、介護、これからの家族。
親が元気なうちなら、
急いで答えを出す必要はありません。
Start From 39では、
家族・相続・終活について、
「今だから話せること」
を一つずつ整理していきます。